身近な工藝には、私たちの生き方や未来を考えるヒントが、たくさん発見できます。長い時間軸や広い地理的尺度で工藝を俯瞰することは、新たな洞察を得るために非常に有用です。平安末期に生まれ室町時代に滅んだ珠洲焼を、現代に蘇らせることが、私たちに何を与えてくれたか。日本と中国をむすぶ照葉樹林文化は、工藝の源流から未来をどう見せてくれたかを紹介します。
時代が大きくかわろうとしている今、工藝が注目されるのは、地域や文化のアイデンティティを工藝が反映しており、大きな変革が起きると、人々はそれらを守ろうとするからです。また、工藝は人間と自然の接点から生まれるので、自然との関係を再考させてくれるからです。
世界市場で和紙の普及を成功させた企業は「でも伝統工芸は守ろうとすると、滅んでしまう」と言う。不変のものを堅持しつつ常に新しい創造性を追求していく。やはり答えは、地球の大きな循環を象徴する自然にあるようです。